番外編・美しい花(2)


 美しい花(1)の続編です。もう順位がわからなくなってしまったので、順不同で紹介します。

リビングストンデージー(Dorotheanthus bellidiformis)ツルナ科
 南アフリカ原産の一年草で、マツバギクのような金属光沢のある美しい花を春から初夏に咲かせます。ピンク、黄、白、オレンジに、蛇の目模様など、色とりどりの色彩は、とてもビビットで人目を引きます。おまけに、へら型の葉には、小さな水滴ような粒々があり、まるでビース細工のようです。欠点は、曇りの日や夜には花が閉じてしまうことです。秋または、春に種をまいて育てます。寒さに少し弱いので、霜の降りる地域ではフレームで防寒して育苗する必要があります。
リビングストンデージー(<I>Dorotheanthus bellidiformis</I>)
デンドロビウム・ノビル系(<I>Dendrobium</I> Oriental Smile 'Orange Heart') デンドロビウム・ノビル系(Dendrobium Oriental Smile 'Orange Heart')ラン科
 日本に自生しているセッコクに近縁の植物です。日本で特に改良が進んでいて、大変美しい花が咲く品種が多数作出されてます。竹のような姿で、早春にその節々に数輪ずつの花をびっしりとつけます。写真の品種は、オリエンタルスマイルという名前のオレンジ系の目新しい色彩の花を咲かせます。白、黄色、ピンク、赤など、とても派手な色彩です。花芽ができるためには、ある程度の低温が必要なので、常夏の熱帯地方では咲かせにくいのですが、日本の気候には合っていて、少し工夫すれば温室がなくてもうまく育てることが出来るのもうれしいところです。アジアからオセアニアに主に自生するランであるデンドロビウム属の仲間には、改良されていない原種にも美しい花をつける種類がたくさんあります。
ハナバス(Nelumbo cv.)ハス科
 水中の泥の中に育つ水生植物です。根茎をレンコンとして食用にする品種もありますが、花が大変美しいので花の鑑賞の目的で作られた品種もたくさんあります。写真の品種はチャワンバスといい、茶碗くらい小さな器でも育てることができるといわれている小型の品種です。茶碗はオーバーとしても、姫スイレンを育てるような小さな器でも咲かせることができます。直径15cm位の八重の花を夏に咲かせます。花だけでなく、葉の形もキノコのようで変わっていて美しく、つぼみもとてもきれいな形をしています。また、花が終わった後にできる実は、ほんとうにジョウロのハス口のようで、これもまた鑑賞に堪えます。汚い泥の中に育っても、それに汚されず清楚な花をつけることが仏教などで珍重されてきた理由なのでしょう。
チャワンバス(<I>Nelumbo</I> cv.)
ブーゲンビレア(<I>Bougainvillea</I> cv.) ブーゲンビレア(Bougainvillea cv.)オシロイバナ科
 この色も大変人目を引きます。ただ、人目を引くのは本当の花ではなく、苞(ほう)と呼ばれる部分です。とげのある茎でつる植物のように、ものに引っかかりながら高く伸びで、数多くの花をつけます。ただ、寒さには少し弱く0℃以下になると枯れてしまいますので、保護が必要です。日本では鉢植えにして育てます。水を控えて締めて作ると、枝もあまり伸びず、花もよく咲かせます。沖縄などでは盆栽に仕立てることもあります。
セイヨウアサガオ(Ipomoea tricolor cv. 'Heavenly Blue')ヒルガオ科
 アサガオの仲間は、美しい花をつけるものが多く、1200年前に日本に入り、江戸時代にさかんに品種改良が加えられました。東京入谷の鬼子母神の夏の朝顔市は全国的に有名な行事です。ここで紹介したセイヨウアサガオは、古くから作られているアサガオと性質が異なっていて、サツマイモのようなハート型の葉で、ひとつの節に複数のつぼみをつけます。このため、花が咲いたときにはとてもにぎやかです。ただ、日が短くならないと花をつけない性質が強いので、開花の最盛期は秋から霜の降りるまでになります。写真の品種は、ヘブンリーブルー(天国の青、ソライロアサガオとも)と呼ばれるもので、この美しい空色は、一度は育ててみる価値があると思います。この他にも、フライングソーサー(青と白の絞り)、スカーレットオハラ(ピンク)、パーリーゲート(白)などの仲間があります。肥料をやると、ものすごい勢いでつるがのび、広い面積をたちまち覆い尽くしてしまいますし、開花も遅れますので、肥培はほどほどにするのが、うまく育てるコツです。
セイヨウアサガオ(<I>Ipomoea tricolor</I> cv. 'Heavenly Blue')
ハナスベリヒユ(<I>Portulaca</I> cv.) ハナスベリヒユ(Portulaca cv.)スベリヒユ科
 マツバボタンや雑草のスベリヒユに近い仲間です。1983年に日本に導入され、大阪花博で脚光をあびて、すっかり市民権を得た花です。マツバボタンに似た花を付け、マツバボタンよりも秋遅くまで咲きます。また、挿し木で簡単に増えるので、広い面積を飾るのも簡単です。写真は、オレンジと黄色の2種類ですが、花色は、白、赤、ピンクの濃淡などがあり、混合して植えるとにぎやかで楽しい感じです。花のオシベを触ると、花粉をつけようとおしべがモゾモゾ動くのも、子供たちに観察する楽しみを与えています。種で繁殖することは難しいので、秋に挿し木して、小苗を温室で越冬させます。
ブラキカム(Brachycome cv. 'Bracky Blue')キク科
 ヒメコスモスなどとも呼ばれるキク科の植物です。普通は、秋に種をまいて春に咲かせる一年草です。矮性品種である、写真のブラッキーブルーという品種は、花の時期には、花が密に咲いてまるで絨毯のようになります。種からたくさんの苗を育てて、一面に咲かせると、見る人を感動させるでしょう。最近は、あまり育てる人がいないようですが、もっと注目していい草花ではないでしょうか。
ブラキカム ブラッキー・ブルー(<I>Brachycome</I> cv. 'Bracky Blue'))
ラナンキュラス(<I>Ranunculus asiaticus</I> cv.) ラナンキュラス(Ranunculus asiaticus cv.)キンポウゲ科
 秋植えの球根植物です。ハナキンポウゲとも言います。とても花弁の重ねが多い八重の花を咲かせます。花色も豊富で派手な色が多く、比較的育てやすい植物です。最近では、バイカラー系という、花に縁取りのように違う色の入る品種があり、とても美しいものです。栽培のポイントは、植付け時期と最初の水のやり方です。塊根は、根元が干からびたような形で、茎のついていたほうを上にして植え付けますが、関東地方では11月下旬以降のかなり遅くなってから植え付けたほうが腐らずに失敗しません。これは、アネモネの植付けにも言える事です。また、植え付けた直後に水をたくさん与えずに、少しずつ湿り気を増やすような感じで、量を加減すれば、めんどくさい吸水処理などをしなくても結構よく育つものです。
バンダ(Vanda Bangyikhan Blue 'VM-59')ラン科
 ブルーのランといえば、まずバンダをあげなければなりません。バンダは、東南アジアの高温性の着生ランです。扇のように規則正しく葉を左右に広げ、土のないバスケットに植え込まれて、ただ、根だけがたくさん空中に伸び出している姿はとても変わっていて、一度見たら忘れないでしょう。欠点は寒さに弱く、最低でも15℃を保たないと、やがて弱って枯れてしまいます。ただ、タイなどの熱帯地方では盛んに品種改良されています。ランの仲間は、交配の記録が登録制になっており、原種までさかのぼることができます。、写真のバンギハン・ブルーは、原種から8世代めの品種です。家系図を書くと、V. Bangyikhan Blue=(V. Star Sapphire=(V. Sun ray=(V. Sarojini=(V. coerulea x V. Mabelmae Kamahele=(V. Ohuohu=(V. ClaraShipmanFishe=(V. sanderiana x V. Tatzei=(V. sanderiana x V. tricolor)) x V. sanderiana) x V. sanderiana)) x V. Sun Tan=(vBeebe Sumner=(V. 0nomea=(V. Rothschildiana=(V. coerulea x V. sanderiana) x V. sanderiana) x V. Clara Shipman Fisher=(V. sanderiana x V. Tatzeri=(V. sanderiana x vtricolor))) x V. sanderiana)) x V. sanderiana) x V. coerulea)となります。
バンダ バンギハン・ブルー(<I>Vanda</I> Bangyikhan Blue 'VM-59')
エリカ・セリントイデス(<I>Erica cerinthoides</I>) エリカ類(Erica cerinthoides)ツツジ科
 エリカ属は、旧世界を中心に約700種と、非常にたくさんの種類があります。主に冬から早春の鉢物として楽しまれています。葉は、細くて細かいものが多く、こんもりと茂って花を引き立てます。よく見かけるものは、ジャノメエリカやクリスマスパレードですが。写真は、セリントイデスという、最近導入された種です。花色は蛍光色のオレンジで、まるで、木にランプがついているようで、人目を引きます。
アジサイ(Hydrangea cv.)アジサイ科
 アジサイは、これまで、梅雨時の地味な花というイメージが強かったのですが、最近の急速な品種改良で、大変美しい品種がたくさん作られています。アジサイは、以前はユキノシタ科に分類されることもありました。写真の西洋アジサイと山アジサイなどの日本原産のさまざまな種類のアジサイが交配されて、美しいピンクでフリルがあるもの、装飾花の周辺に色の違った縁取りが入るもの、咲き始めから色が変化していくものなど、さまざまな美しい特色を持つ品種が作り出されています。カタツムリのにあうじめじめした感じの花から、おしゃれな鉢花に変身中といったところでしょう。これらの品種は、親になっている種によって、強い日差しに弱かったり、寒さに弱く戸外で越冬できなかったりすることがありますので、育てるときには注意が必要でしょう。
セイヨウアジサイ(<I>Hydrangea</I> cv.)
フウリンソウ(<I>Campanula medium</I> cv.) フウリンソウ(Campanula medium cv.)キキョウ科
 カンパニュラの仲間には、山草のような可憐な花を咲かせるものが多いのですが、このメディウム種は、1mにもなる花穂に長さ6cm位の壷状の、青紫、ピンク、白の美しい花を初夏に付けます。園芸的には二年草として扱われていて、春に種をまくと、秋までに成長して、十分な大きさに育つと、冬の寒さで花芽がつき、次の年の春から初夏に開花します。最近は、品種改良されて、それほど時間がかからずに花を咲かせる品種もできています。
キク類(Dendranthema grandiflorum cv.)キク科
 日本では、仏様の花のイメージが強く、また、切花として営利的な生産が多い植物です。日本では平安時代から栽培されて、古くから愛されている植物です。種類も多く、日本独特の大菊、小菊、盆栽、懸崖仕立て、スプレー菊、福助作り、嵯峨菊、江戸菊、伊勢菊、ポットマム、食用菊などがあります。私たちにこれだけ愛されてきたのも、この花の持つ美しさがあってのことでしょう。菊といえば秋の花と思いますが、品種改良と日長の制御で、一年中好きな時期に開花させられるのもすばらしいことです。写真のキクは、完全に開いていませんが、丁字咲きの品種で、普通の切花菊とはちょっと違ったイメージを持つものです。
キク(チョウジザキ)(<I>Dendranthema grandiflorum</I> cv.)
シャクヤク(<I>Paeonia lactiflora</I> cv. 'Sarah Vernal') シャクヤク サラ・ベルナール(Paeonia lactiflora cv. 'Sarah Vernal')キンポウゲ科
 立てばシャクヤクというくらい、すらっと伸びた茎に大きな美しい花を咲かせるシャクヤクは、美人の立ち姿を連想させるようです。中国からチベットの原産です。ボタンと同じ仲間ですが、宿根草のシャクヤクは、冬になると地上部が枯れてしまいます。そして、春になると地中から太い芽を出してすくすく伸びて花を咲かせます。このように地中に太い根があり、春からの成長量が大きく、それだけ精力がある植物ということで、古くから婦人病などの漢方薬としても珍重されています。写真は、サラ・ベルナールという品種で、たいへん淡いピンク色の八重咲花を付ける清楚な品種です。
ダリア(Dahlia cv. 'Kazaridama')キク科
 都市温暖化の影響をもろに受けてしまった植物が、このダリアではないでしょうか。昔は、たいへん一般的な花壇の花として、都会でもよく作られていましたが、最近はほとんど見かけません。昔の漫画に、サツマイモと間違えてダリアの球根を食べてしまうという話がありました。昔はそれくらい一般によく知られていた植物だったことがうかがえます。いまでは、ダリアの塊根がどんな形をしているか知っている人は少ないのではないでしょうか。原産地がメキシコや中央アメリカなので、涼しい気候を好み、夏の夜が蒸し暑くなった都会では、本当に育てるのが難しい植物になりました。高原や田んぼの周囲など、夜に気温が下がる場所では、いまでも元気に美しい花を付けています。大輪のデコラティプ咲き、カクタス咲き、中輪のコラレット咲き、アネモネ咲き、小輪のポンポン咲きなど、とてもたくさんの品種があり、純青色以外のほとんどの色があって、うまく育ちさえすれば、もっと人気が出るのかもしれません。写真は、ポンポン咲きの品種、飾り玉です。
ダリア カザリダマ(<I>Dahlia</I> cv. 'Kazaridama')
フジ イッサイフジ(<I>Wisteria floribunda</I> cv.) フジ(Wisteria floribunda cv.)マメ科
 日本にも自生しているフジは、その美しい紫色の花で、古くから日本人にも愛されてきました。藤色という色もあるし、藤棚、藤娘など、身近な存在として私たちの文化や生活に密接な影響を与えています。日本では、ヤマフジとノダフジの品種が観賞用に広く栽培されてきました。この独特な紫色は、他の植物にはない特色です。また、香りの良いものが多いことも魅力です。外国人からも、オリエントな雰囲気のエキゾチックな植物として好感を持って迎えられています。写真は、小鉢でもよく花の咲く、ノダフジ系の一才藤です。挿し木ができるくせに、藤は根を切られることに弱く、移植のときに普通の樹木のように根巻きして根を切ってしまうと、植え替えてから何年も成長がぱったり止まって咲かなくなり、ひどいときには枯れてしまうことさえあります。太い根を切らずにできるだけ長い状態で掘り上げて植え替える必要があります。
ネッタイスイレン(Nymphaea cv. 'Mrs. M.L.Randing')ヒツジグサ科
 温帯性のスイレンと美しさで一線を画すのが、このネッタイスイレンです。耐寒性はやや弱いのですが、水中から空中に首を伸ばして咲く花の色はとても鮮明で、一見の価値があります。葉も縁がぎざぎざになっている品種が多く、温帯性スイレンとの区別ははっきりしています。昼に咲くものだけでなく、夜に咲くものもあり、大輪のものもあり、また、香りのすばらしいものもあるなど、魅力の大きな植物です。この花を観賞するのならば、静岡県の伊豆にある熱川バナナワニ園に温室ひとつ分のコレクションがあり、温泉の熱で周年花を付けています。昔は、小型のコロラータという品種しか一般には手に入らなかったのですが、最近では、多種の苗が市販されるようになってきて、ウォーターガーデンを華やかに演出する役者がまたひとつ増えました。
ネッタイスイレン ミセス・M・L・ランディング(<I>Nymphaea</I> cv. 'Mrs. M.L.Randing')
クラジオラス ウインドソング(<I>Gladiolus</I> cv. 'Wind Song') クラジオラス(Gladiolus cv. 'Wind Song')アヤメ科
 アジア西部、地中海、アフリカ、ヨーロッパ、マダカスカルなどの種を交配して、現在のような華やかな品種が多数作られました。すらっと伸びた花茎にランのような花形の花を穂状につけ、美しく見ごたえのある植物です。一般的な夏咲き系統のほかに、すこし小輪の春咲き(早咲き)の系統もあります。春咲きは、寒さに弱く作りにくいところがあるのですが、花に独特な赤い模様が入るところが、とても目を引く系統です。国外からの球茎の輸入が自由化されたので、チューリップと並んで球茎の価格が低下していて、まとめてたくさん植えて楽しむことが気軽にできるようになりました。夏咲き系統では、植付けから一定の期間がたつと咲くので、3月から7月にずらして球茎を植え付けると、長く楽しめます。写真は、ウインドソングというピンク色の夏咲き系統の品種です。
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